損失と利益の非対称性
ほとんどのトレーダーが過小評価している、トレーディングにおける最も重要な計算原理がある。損失と利益は対称ではない。10%の損失を取り戻すには11.1%の利益が必要だ。20%の損失には25%、50%の損失には100%、75%の損失には300%の利益が必要となる。ドローダウンが深いほど、回復は指数関数的に困難になる。この非対称性こそが、大きなリターンを狙うより資本を守る方が期待値として高い、という数学的根拠である。
損失率Lからの回復に必要な利益率の計算式は以下の通りだ:
回復率 % = L ÷ (1 − L)
ここでLは損失を小数で表した値。50%のドローダウンの場合:0.50 / (1 − 0.50) = 1.00、つまり100%の利益が必要。30%のドローダウンの場合:0.30 / 0.70 = 42.9%の利益が必要。無料ドローダウン計算ツールを使えば、任意の損失率に対してこの計算を即座に実行できる。
| ドローダウン | 必要な回復率 | 月利2%の場合の回復月数 |
|---|---|---|
| 10% | 11.1% | 約5.6ヶ月 |
| 20% | 25.0% | 約11.3ヶ月 |
| 30% | 42.9% | 約18.2ヶ月 |
| 40% | 66.7% | 約26.2ヶ月 |
| 50% | 100.0% | 約35.0ヶ月 |
安定した月利2%で50%のドローダウンから回復するには約3年かかる。その3年間、トレーダーは純粋な意味で前進できていない — ただ元の水準まで這い上がるだけだ。大きなドローダウンの真のコストは失った資金だけではなく、回復義務によって遅延する将来の複利成長すべてにある。
最大ドローダウンと高値からのドローダウン
最大ドローダウン(MDD)とは、特定期間中に観測された口座資産の最大の山から谷への下落幅のことだ。これは戦略間のリスク比較に使われる標準的な指標である。2年間で15%のMDDを持つ戦略は、同期間で35%のMDDを持つ戦略より明らかにリスクが低い。たとえ後者の全体リターンが高くても、破産リスクと心理的負担は根本的に異なる。
現在の高値からのドローダウンはリアルタイムの指標で、口座が直近の最高値からどれだけ下落しているかを示す。この数値が拡大するほど、ポジションサイジングはより保守的にすべきだ。損失後に「早く取り返そう」とサイズを増やすのはよくある間違いで、数学的に必要なことの真逆である。ドローダウン中にサイズを増やすと、さらに深い穴へ落ち込むリスクが高まり、回復にかかる時間が一層長くなる。
最大ドローダウンを抑えるためのサイジング
ポジションサイジングガイドで解説した固定分数モデルは、口座残高が減少するにつれてドルリスクを自動的に縮小する。1トレードあたり1%のリスク設定で10連敗した場合(全てストップロス)、ドローダウンは9.6%にとどまる。痛みはあるが数ヶ月で回復可能だ。同じ連敗が5%リスクなら40%のドローダウンとなり、回復には67%の利益が必要になる。この結果の差は、選択したリスク率のみに起因する。
裁量トレーダーにとって実践的なドローダウン管理ルールは、口座が「サーキットブレーカー」水準(一般的に10%または20%のドローダウン)を下回った場合、前回の高値まで回復するまでポジションサイズを50%削減することだ。これにより、既にストレスを受けているエクイティカーブが、困難な時期に通常サイズの損失でさらに悪化するのを防ぐ。